2008年12月9日火曜日

Senegal:タバスキ


今日はタバスキです。この祭りはAïd el Kébirというイスラムの犠牲祭で旧約聖書のアブラハム(イブラヒム)が息子のイサク(イスマエル)を神の犠牲にしたというエピソードから来ています。また、この日はメッカ巡礼の最終日でもあるそうです。
さて、この犠牲祭なわけですが、まさか本当に子供を殺すわけにはいかないので、象徴として羊(牡羊)を殺すことにしたそうです。で、イスラム教徒の一家の長はこの日に羊を殺さなければいけない、というきまりができてしまったのです。ということで、今日は世界中で羊の受難の日、数千万頭が一気に殺されるというジェノサイドの日なのです。
朝の礼拝、だいたい9時半ごろですが、これから帰ってくると羊殺しがはじまります。私はこの時間帯には外に出ないようにしているのですが・・・というのは、これは肉屋のように見えないところでやるのではなく、たいていショウのような感じでやりますし、首を切ったときのしたたる血を地面に落とさなければいけない、という決まりもあるのです。だから、アパートなんかの人は外でやるんです。
それが終わるとガンガン羊をバラします。詳しい説明は割愛しますが、セネガルではどんどん「肉」にしていきますが、ニジェールでは違います。ニジェールでは木の枝をXの形にして、それに羊を丸のまま磔にして、丸焼きにします。セネガルでは、この肉を少しずつなんですけどかなり派手に食べていきます。まず、お昼頃、あばらの部分とレバー、睾丸などを炭火焼にしてマスタードをつけて食べます。私はタバスキ料理の中でこれが一番うまいと思います。次に3時頃、今度は肉を使ったヤッサ(タマネギがたくさん入ったソース)が出ます。夜になるとまたまた肉の今度はクスクス、都市部ではこの日は黄色いモロッコ風のクスクス、になって出てきます。でも一般的にタバスキの羊はおいしいものではないです。というのは、牡羊のかなり年を食った角がりっぱなやつが「いい羊」とされているからです。羊で一番うまいのはやはりAgneauと呼ばれる子羊ですし、あんなにデカくなってしまうと肉も硬いし、臭いもあります。
それにしても、子供を象徴する羊をすぐ食べるというのもかなりアレですし、イサクはそんなトウの立った牡羊ではなく、子供だったはずですが、これは多分社会的慣習の中でデカく立派な羊を犠牲にすることがステータスとなったものなのでしょう。
ところによっては羊のかわりに牛やヤギを使うところもあるそうですが、セネガルではヤギを使うというのはかなり屈辱的な貧乏と見られるようです。それにしても、最初からニワトリくらいにしておいてくれれば、今日このように毎年羊をめぐる悲喜こもごももなかったものを・・・
都市化が進んだダカールでは羊を飼うことは容易ではないので、ほとんどの人が買うことになります。それは農村部、遠いところはマリあたりからもダカールまで連れてくるわけです。それを郊外の集積地に集め、そこがマーケットとなります。しかし、羊の値段は上がるばかり。うちの前にも数匹の羊をつれた羊売りが昨日なんかはたくさんいましたが、1匹4万円とか6万円とかするのです。高すぎます。そんなに羊だけにお金をかけられる人はそういるものではありません。タバスキは羊だけではなく、もちろん他の食材もいりますし、それだけでなく女性や子供の服を新調したり、とにかくお金がかかるものなのです。
ということで、タバスキが終わると、連れて帰ることになります。これがまたやっかいで、今年などはタバスキが乾期のまんなかなので、羊によって畑が荒らされるとかはないのですが、これが収穫期にかかったりすると、大変なことになります。
将来的に見てもこの羊の慣習が都市化と現代的ライフスタイルにそぐわないことは明らかなので、少しずつでも変えていく必要性にかられるでしょう。サウジがバーチャル羊の殺戮サイトを運営して、そこのサイトで羊を生け贄にするとありがたいおふだを印刷できる、というのを出した方がいいと思います。

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