2009年3月18日水曜日

Madagascar:政治的混乱は終わるのか?


マダガスカル大統領マーク・ラバロマナナは昨日辞意を表し、「政権を軍部に移管する」としました。そして、現在は在マダガスカルのアメリカ大使館に身を寄せているようです。(Afrik.comの記事
さて、政権を大統領から譲り受けた軍部はこれをそっくりそのままラジョエリナ氏に渡し、(Afrik.comの記事)ラジョエリナ氏は大統領府に入り、大統領就任宣言をしました。(記事
これで、2009年1月からのマダガスカルの政治的な混乱は一応の決着を見ました。
2/9の記事で私自身国民に銃を向けた大統領に大統領たる資格はない、と書いていますがこの事件ですでにラバロマナナ大統領の命運は尽きていたのだと思います。この時にレフェランダムなりラジョエリナ氏に政権を渡すなりしていれば、マダガスカルの政治は救われたと考えます。
しかし、ラバロマナナ大統領は粘ったのです。これはラジョエリナ氏を甘く見すぎていたこともあるでしょうし、最後の政権の譲り方を見てもラバロマナナ氏が「ラジョエリナ氏にだけは渡したくなかった」というのがありありと見て取れます。それだけ深い確執と嫌悪をこの2人はお互いに抱いているということなのでしょう。そして、この2月からの1ヶ月・・・これがマダガスカルという国のシステムを深く傷つけることになるのです。ラジョエリナ氏陣営の決定打を出せない政治力不足、そして軍部のゴタゴタ、分裂。名乗りを上げるだけの大臣・・・この1ヶ月の間に次々とこのような事態が生じ、アナーキーな「印象」を作り上げてしまったのです。

さて、今回ラバロマナナ氏が身を引いて、これで決着するのでしょうか?
私はこれについては懐疑的にならざるを得ません。まず、大統領になったラジョエリナ氏ですが、欧米のメディアもこぞって「若すぎる」「力不足」「DJ上がり」とかなり辛口な記事を出しているようです。私は年齢や職歴は関係ないと思いますが、力不足はこの1ヶ月たっぷりと見せてもらったわけで、この点においてラジョエリナ氏にマダガスカルを「率いていく」ことができるかは大いに疑問があります。ラジョエリナ氏はフランスとは結構関係を持っているようですが、AUなどにはほとんど知られていない存在でしょう。ラジョエリナ氏はマダガスカル内に視線が向きすぎているように思います。また、マダガスカル内に目を向けてみても、ラジョエリナ氏が国民の圧倒的な支持を得ているかというと、そうでもないようです。ラバロマナナ氏にはかなりの支持基盤がありましたし、だからこそ彼は粘った。また、この1ヶ月のゴタゴタで人々の生活はかなり不愉快なものになっており、それをラジョエリナ氏のせいだと考える人も少なくない。また、軍部は今回政権をそっくりラジョエリナ氏に渡しましたが、これはラジョエリナ氏が軍部を掌握しているわけではないと思います。またこの「譲った」という行為そのものが、今後ずっしりとラジョエリナ氏の肩に重い荷物となっていく気がしてなりません。
これらの内圧、外圧にラジョエリナ新大統領が耐えられるかどうか?
これは大いに疑問です。
とにかく、トランジションのための政府を立てて、事態を収拾し正常化させることがラジョエリナ新大統領にとって急務といえます。その後、やはり選挙を実施して民主的にリーダーを選ばなければなりません。それを考えると、これはマダガスカルの政治的混乱の終結ではなく、単に1つのパラグラフが終わっただけ、という気がするのです。まあ、そのパラグラフが他のアフリカ諸国と比較してプルーストばりに長いのはマダガスカルの国民性・・・なのでしょうか?

=UPDATE=
やはり早速この「ラバロマナナ辞任→軍部に政権移管→軍部はラジョエリナ氏に丸投げ」というイレギュラーな流れは国際社会の批判を呼んでいます。AU安全委員会をはじめ、南ア大統領、SADC、ナイジェリア外相が「容認できない」としています。(AllAfricaの記事)また国連事務総長もマダガスカル情勢を「憂慮している」としています。(Afrique en Ligne
そして、ラジョエリナ新大統領(自称)にNOを突きつけたのは、外国だけではありません。もっと近くというか、マダガスカルの憲法そのものが壁のごとく立ちはだかりました。(BBC)マダガスカルの憲法では大統領は40歳以上でないと就任できないことになっており、34歳のラジョエリナ氏は6年足りないことになります。ラジョエリナ氏は押し切るつもりのようですが、マダガスカル最高裁は慎重な姿勢を見せています。
ラジョエリナ氏はスキピオ・アフリカヌスのようにこの「年齢制限の壁」を打ち破ることができるのでしょうか?

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