2007年7月31日火曜日

嵐の前の静けさ?


iPhoneをめぐる狂騒が一段落したようで、最近Apple周辺はあまり目立った動きがないが、実は噂ベースではいろんな囁きが・・・
まずはiMacがいよいよ刷新されるらしい。次に6th Gen. iPodが8月に発表されるという噂。そしてもちろん10月にはLeopardが待っている。もう1つ、新しいAppleキーボードだ!
このデザイン、素晴らしい。ありそうでなかった感じ。NYCで「くるくる巻けるシリコン製のフラットキーボード」がCompUSAに売っていたがデザインとしてはあんな感じ。
で、言うまでもなくこのキーボードデザインはMacBookのソレを引き継いでいるのだが、私はこのMacBookのキーボードはとても使いやすいと思う。キートップの形状も凝ったデザインでもなくシンプルなのに使いやすい。これに慣れてしまうとPowerBookのキーボードさえ使いにくく感じるし、iMacについてるApple Keyboardはストロークが大きく重いので疲れてしまう。
これは単体で発売されたら多分CYVOGUEを全部このキーボードに変えようと思う。
昔の白いキーボードは材質的にも形状的にも汚れやすかったので、普通のWin用のキーボードを今では使っているのだが(キートップは黒)新しいキーボードは掃除もしやすそうだし、何よりも1クラス上の高級感がある。

とにかく、8月からは立て続けにイロイロありそうな予感である。

2007年7月29日日曜日

Adobeの挑戦


AdobeといえばPhotoshopにIllustrator。しかし、最近Adobeが変わりつつある。

MS対Appleというパソコン界の構図の中で常にうまく立ち回り、業界標準を作り出してきた影の支配者、それがAdobeである。Adobeは純粋なソフトハウスであり、ハードを作らないところではMSチックなビジネスモデルである。しかしAdobeのビジネススタイルはMSの何年も先を行っているのだ。Adobeがハードを作る必要がなかったのはAppleがMacを作っていたからである。そしてMacがWYSIWIGなパソコンだったからである。プロセッサのスピードが遅く、メモリも貧弱だった時代にポストスクリプトは有用な技術であった。そしてこのポストスクリプトの業界標準化というやりかたはAdobeのそれ以降のビジネスモデルのキーワードとなる。ちなみに、PhotoshopもIllustratorもMac用のソフトであり、かなり最近Win用に「移植」されたのである。

さて、DTPの黄金時代が去り、Webの時代に入ったとき、AdobeはMacromediaを買収した。Macromediaは昔からDirectorという優れた動画+アプリケーション開発のソフトを持っており、これを進化させてベクターベースのアニメーションソフトFlashを完成させしかもこれをWebにおけるアニメーションの標準化することに成功していた。AdobeはMacromedia買収後、このFlashをさらに進化させWeb上のアプリケーションの総合的な開発環境として定着させた。

そのAdobeがさらにWebアプリケーションを進化させようとしている。Adobeは長い目で見ていけばPhotoshopもIllustratorも今と同じような単体のアプリとして非常に高価格で売り続けることを考えていない気がする。それよりはサーバサイドのアプリケーションとしてライセンスを売っていくというビジネススタイルに脱皮しようとしている気がする。

MSがWinというプラットフォームに束縛されているのを尻目に、AdobeやAppleはマルチプラットフォームの世界に突き進んでいる。これに関してはダメダメなRealすらMSに対して一日の長がある。MSはベクターベースのアニメーションプラットフォームを開発しているそうだがこれは多分「第二のZune」にしかならない。MSは普及率という力でWMVをWeb上の動画の標準フォーマットにまでしてきたが、多分同じ戦略は今では通用しないだろう。Flashがここまで普及している以上、そのシェアを奪うのは容易ではないだろうし、WMVの時は相手がREALやDivXだったが今度はAdobeだ。

実はAppleもiPhoneによって「コンピュータ」の世界からの飛躍を図っていると思う。iPhoneはMac OSをMacから解放し、「埋め込みOS」としての可能性を示唆するものだと思うし、AppleはMac OSの技術を一種の「切り売り」をしていくのではないだろうか?例えばApple TV。そしてWeb Kitなどでその片鱗が伺えるように思う。

AdobeとAppleがSafariでガッチリ手を組んだらとんでもないことが起きるのかもしれない。

2007年7月27日金曜日

Linuxはアフリカに定着するか?


現在の状況から言うと、ここらあたりのネットカフェを見る限り、全体のシェア予想は98%くらいがWinで2%くらいがMacなのではないかと思う。企業で使われているPCは正規ライセンスだろうが、ネットカフェなどではその大部分が違法コピーだと思われる。MSは違法コピーのアップデートをさせていないから、これらのほとんどが非常に脆弱な状態のままネットに接続されていると言える。現在は接続速度のリミットがきついので、それこそ「踏み台」にされることは少ないのだろうが、これがスピードアップされればいろんな攻撃の踏み台にされる可能性は高い。またウイルスをばらまく温床になっていくだろう。アフリカにおいて違法コピーを使うのはまったく罪悪感がないし、ウイルスをばらまくことも、無駄なトラフィックを盛大に発生させることにも全然罪悪感はないのだ。言ってみればネットにおけるマナーというものが存在しない。

IT普及における「慣れ」の重要度は高く、一度あるOSに慣れてしまうと、他のOSに移行するのはおっくうになる。特にWinは習慣性の強いOSだと思う。「ユーザにとっての便利さ」を追求した結果、ユーザが自分で’何を実際にやらせているかを理解することなしに何でもマウスのクリックとコンテクストメニューによって出来てしまう。特に初心者はこの見た目の便利さにハマりやすく、その結果ファイルが通常の何倍の大きさになろうと、それを送りつけられて開くのに閉口しようと気にしないのである。

しかし、新しいWin OSの要求するマシンスペックが増大するにつれて、古いマシンでは動きがトロくなってくる。その間にLinuxは急激な成長を遂げたと思う。ただ、知る人が少ないのである。Linuxを知る人が増えれば普及すると思う。問題点として今のLinuxディストリビューションのほとんどがインターネット常時接続を前提に作られているということだ。KNOPRIXなどを除いてはインストール時にもインターネット接続が必要とされる。(このプロセスを手動でスキップさせることは可能)
つまりネットインフラの脆弱なアフリカでは厳しいのである。

確かに、ここ数年でアフリカのネット事情は大幅に改善したとは思う。セネガルのADSLは安く安定しているし、ベナンなどでは無線接続が普及しつつあり、WiFiスポットさえ登場している。ニジェールでさえ、ADSLが登場した。(しかし安定はしていないらしく、相変わらずブラックアウトしてることが多い・・・)表面上はかなり先進国に近づいてきているように思う。
それでもまだ難しい。現代的なコンピュータというのはWinであれ、Macであれ、Linuxであれネットインフラを基本として作られている。ネットがなければコンピュータの持つポテンシャルのほんの一部しか使うことは出来ない。
例えば学校にコンピュータを導入しても、インターネットに接続していなければ、できるのはワープロ、表計算、ゲームと簡単なお絵描きくらいなのである。

ここで登場するのがOLPCプロジェクトである。これについてはまた改めて書こうと思うが、いわゆる「100ドルですべての子供にラップトップを」というプロジェクト。そしてOLPCが採用しているのがFedora CoreをベースとするOLPC用のLinuxなのである。つまり、子供がLinuxに慣れるということはOLPCを卒業した後もLinuxを使い続ける公算が高い。もちろんMSもこのことには気がついていて、「途上国向けにはWin+Officeを30ドルで提供する」などと言っているが、これは多分海賊版をさらに増やす結果にしかならないだろう。30ドルで「売ることが出来るモノ」を数百ドル出して買うのはオタクだけだろう。

ゆっくりではあるがLinuxはいずれアフリカに定着するはずだ、と思う。

今そこにある危機2-セネガルの電力事情


ベナンのGSMほどではないにしろ、こっちもひどいものだ。
セネガルのダカールといえば西アフリカ仏語圏ではコートジボワールのアビジャンにつぐ「大都会」であり、コートジボワールが建国の父ウフェットボワニを失ってから突入した暗黒の内戦時代に入ってからは、事実上西アフリカの中心に戻ったと言ってもいい。

そのダカールは昨年から慢性的な停電に悩まされている。24時間供給が続くことなどまれで、毎日数時間は停電する。そんな状態がもう2年も続いており、状況がひどくなるとメディアや著名人が騒ぎ始め、最終的には大統領が出てきて「これこれこうしましたからもう大丈夫です」とか言って、それで数週間は停電が減る。
でもまたズルズルともとの状態に戻る。
まあ、その度にSenelecは「あれが壊れた、こっちが動かない」といろんな理由を並べ、そして「もうすぐマナンタリの水力発電所が稼働する」だとか「新しい発電所」とか言って「もうすぐ、もうすぐ」を約束するのだが、それがもう2年続いているのですでに「狼少年」。だれも信じる人はいない。

こうなってくるとSenelecが停電させるのは「そうしたいからだ」と勘ぐりたくなる。
新聞で経済学者がSenelecの停電による経済損失はこんなにあると指摘しても大統領はカジュアルに無視しているし、一般的に言われていることに「こんなに停電してるのにSenelecから送られてくる請求書は同じ額」というのも本当だ。むしろ原油の相場が上がっているので「高くなっている」と言った方がいい。

「生産性」や「コスト」を考えなくてもいい政府関係やマージンの大きい大企業は停電しても何百万CFAもする高価な発電機をまわし、公害を助長することをものともせずに仕事を続ける。で、そういうことのできない中小企業や個人経営者はお手上げだ。小型発電機は私も買ったが、それこそものすごい騒音を出すし、発電コストが高すぎてとてもじゃないが採算が取れない。よって停電による被害は弱者を直撃する。
しかし、経済基盤というものを考えればこの負の連鎖がいずれ国力の衰えにつながっていくことは明白なのに・・・このあたりはベナンもセネガルも同じ病根を持っているように感じる。

と、嘆いていても仕方ないので、電気屋と相談してCYVOGUEのソーラー化を検討している。電気屋によればソーラーパネル2枚とバッテリ、インバータ等概算で20万円の出費が必要だが、やってみようと思う。少なくともこれでクリーンなエネルギーによる継続した営業ができるようになるはずだ。停電の影響で客足が遠のいて赤字の現状、さらに赤字が増えるが仕方ない。

笑えるのはこんな劣悪最低な電力会社をセネガル政府は「民営化」しようというのだ・・・
Senelecの主な発電施設や送電施設は植民地時代にフランスが作ったものを引き継いだだけ。
電力需要の増大に従って必要となった施設は日本などの国際協力によって補完。
慢性的なメインテナンス不足によってすべてのインフラが老朽化、常に修理が必要。
職員はおしなべて公社気分で労働意欲が低く、能力も???ストだけは一人前に実施。
こんな会社、誰が買うだろうか?
たとえスティーブジョブスでも立て直しはできない気がする。

2007年7月26日木曜日

iPhone


6月のポスティングから直前のポスティング(ベナンGSM)まで1ヶ月も間が空いてしまった理由は、ニューヨークに行っていたからなのである。そして別に狙ったわけではないのだが、ニューヨーク滞在中の6月29日に丁度AppleからiPhoneが発売された。私も発売の2日後の日曜にSohoのアップルストアに見に行ってきたが、ものすごい人で、とても触れなかった。なんか悔しかったのでその2日後に今度は5番街のプラザホテルの前にある例のガラスのキューブが入り口になってるアップルストアに行って触ってきました。

感想として、これは今までのケータイとは全く別のものであるという感じ。そしてPDAとも違う、どちらかというと高級なiPodに近いもの・・・と感じた。
タッチスクリーンはなめらかで高級感がありしかもこちらの思った通り操作できる。しかも操作していて楽しい。それから変なアラートが出ない。iPhoneそのものもオドロキだったが、もっと驚いたのはメディアなんかのフィーバー(死語)ぶりである。連日iPhone関連の記事が新聞に載り、TVのショウでとりあげられ、5番街の店の前には2日も前から並んでる人がいる。
確かにニューヨークのiPodの普及率はものすごいモノがある。地下鉄に乗れば周りに必ず2〜3人はiPodを操る人がいる。日本なんてレベルじゃない。もう街のいたるところでiPodに遭遇するのだ。そういう環境ではiPhoneが注目されるのも当然と言える。

ヨーロッパでも来年にはiPhoneが発売されるが、どのような形になるのか楽しみだ。
アメリカではat&tと2年契約を結ばなければならないという縛りがあるのだが、それがどうなるか。またGSMがここまで普及したのはSIMカードを入れ変えることによって(日本を除く)ほとんど世界どこでも使えるというポータビリティの優秀さだったわけだがiPhoneはiPodのバッテリと同じくユーザが勝手にSIMカードを入れ替えられないような作りになっている。よって携帯キャリアとAppleとの間に独占的な契約を締結する必要がある。また、近年状況は改善されているとはいえ、町中でのホットスポットは少なく、あっても有料だ。これは使う方として非常に使いにくい。

ましてやアフリカではいつになるのだろう?iPhoneを持っていても機能のほとんどは使えないだろう。iPhoneによってさらにデジタルディバイドの開きが大きくなったと感じてしまうのは何たる皮肉だろう?

あと、アメリカでiPhoneが注目されるのはすでにBlackberryがかなり普及しているからなのだというのも感じた。その点でもヨーロッパは違う。最近SFRというフランスのキャリアはUSBに差し込むモデムを出しているが、これはそのモデムによってラップトップをSFRのネットワークに接続するものである。こういうものが出てくること自体、ケータイのWebがいかに使いにくいかということを意味している。

最後にアメリカ滞在で一度だけZuneを見た。場所はラガーディア空港の売店・・・なんとiPhoneより大きく分厚く、ダサい。
街では結局1度も見かけなかった。MSは100万コ売れたと豪語しているが、もしかしたらレドモンドでだけ局地的に売れたのかもしれない。

2007年7月25日水曜日

今そこにある危機-ベナンGSMスキャンダル


西アフリカの小国ベナンはナイジェリアとトーゴの間にある小さな国だが、民主化が進んでいて今年はじめには無事に政権交代も混乱なくすませたことから、国際的にも優等生と見られていて、急成長を約束されていた。

しかし。

2週間ほど前、政府はこの国のメジャーな携帯キャリア2社を「税金払ってないから」とサービス停止に追い込んだ・・・

ベナンの携帯キャリアは4社あり、政府のPTT(通信公社)が運営するLibercom、西アフリカで広くサービス展開しているTelecel、同じくAreeba(前身Benincel)、そして一番後発のBell Benin Com。加入者が多いのはAreebaとTelecelである。この国はおかしなことに慢性的なSIMカード不足という(はっきりいってわけわからない)問題があり、「SIMは朝早くから並んで買うもの・・・」というヘンな風習がある。これはどのキャリアを見ても同じなのだが、政府系のLibercomは特にSIMがプレミアがつくくらい「買えない」とされており、またサービスも悪いと言われていた。また後発のBB Comはほとんど首都以外ではつながらないという問題をかかえている。
日本で言うなら(規模的に)Docomoとauが突然使えなくなっちゃうようなモノである。

さて、この政府の「払え」と言っている「税金」なのだが、これはよく見ていくと外国資本や国際資本がアフリカに流れ込む際の難しさを象徴しているようなできごとなのだ。
つい最近、TelecelはMoovに、AreebaはMtnに名称を変更している。単なるサービスの名称変更には政府の許可はいらない。お知らせベースで届け出ればいいことなのである。Areebaの場合を見ていくと、これを運営している会社はSPACETEL BENIN S.A.という会社でキャリア名称はBenincel→Areeba→Mtnと変えている。名前を変えても運営している会社は変わらない。
しかし、現地法人のウラには「資本の流動」というものがあり、どうやらコレが「税金」というものに引っかかったようなのだ。SPACETELの設立時、資本がどうなっていたかは不勉強にして知らないのだが、Areebaはブランドとしてはインターナショナルで他国でも展開するレバノン系資本とされている。そして MtnはINVESTCOMという投資ファンドとMtnというキャリアの持つブランドである。もし、SPACETELがMtnグループに売却されたのであれば、キャリアの使用許可をMtnグループは政府に対して再申請しなければならない。というのが政府の言い分。
Areebaは経営はSPACETELなのでその必要はなく、今回も単なる名称変更であるという言い分。

どちらもビミョーな言い分なのであるが、一番困らされたのはユーザであろう。

SPACETELが限りなくグレーな会社であったとしても、百万人単位でユーザがいるものを強制的にサービス停止させた政府の暴挙はアフリカにおける事業の脆さ、投資の危険さをひしひしと感じさせるもので、たとえベナンの政権が安定したとしても今後数年にわたり海外からの投資を控える動きが出るだろう。SPACETEL解体ともなれば公称1万5千人いる職員は路頭に迷う。これに対する補償はどうなるのか?今の状態は誰にも不幸な状態である。ユーザもSPACETEL職員もSPACETELへの投資者も、政府も。
唯一笑えるのはLibercomのみ。となると、これはユーザをLibercomに取り込み、Areebaのインフラを極めて安価に乗っ取るという政府のたくらみとも思えるわけで、こんな話まるで昔のギニアとかコンゴ民でしか聞いたことがないくらいの民主度の低い話。また、もし対話をする気があるなら水面下で話をつければいいものを・・・

とにかく、優等生に見えても叩けばいくらでもホコリが出るというのをまじまじと感じさせてくれる事件です。