2008年11月2日日曜日

Senegal:Air Senegal International


セネガルのフラッグキャリア、Air Senegal Internationalが危機に立たされています。
この航空会社は昔のAirSenegalを引き継いだもの・・・なのですが、以前のAir Senegalはバンジュル便、カーボベルデのプライア便を除いては全部国内便で、古いプロペラ機を2台しか持っていませんでしたから、全くレベルの違う別会社と言えます。
それはAir Senegalの時代には国際便を飛ばすのはAir Afriqueという別の会社があったのですから、Air Senegalが自前で国際便を飛ばすニーズそのものがなかったわけです。しかしAir Afriqueはつぶれてしまい、Air Afriqueによってつながれていた各国はそれぞれ自前で航空会社を作らざるを得なくなります。これが2001年の西アフリカ航空会社の大再編成となります。コートジボワールはAir FranceとAIGによってAir Ivoireを復活、ブルキナファソはAir Burkinaを中東のファンドによって民営化します。そして完全に死体同然だったAir SenegalはRoyal Air Marocのグループ下に入り、51%をRAMが、49%をセネガル政府が持つ会社として再出発するわけです。
Boeing 737で運行するダカール=パリ(オルリー)便を中心に、新しい航空会社として再出発したAir Senegal Internationalのサービスは良く、域内で人気を博します。同時期に再生されたAir IvoireはASIに比べて高価、またAir Burkinaは機体が古く、サービスもよくありませんでしたから、RAMのノウハウを受け継ぎ、広告会社を通したサービス戦略によってASIの人気は上がりました。
しかし、2007年11月、ちょうど1年前にセネガル政府はさらにASIの株を26%買い足して筆頭株主になります。なんでこのような無意味なことをするのか理解に苦しみますが、このことによって昔の盟友であったRAMはASIに背を向け始めます。そして、ASIの業績は国際的な燃料高騰や航空業界の減益の影響を受け、急激に悪化。ドル箱であったフランスのリヨン便廃止に追い込まれます。また、それに続いてメッカ巡礼の契約(セネガルでは国がメッカ巡礼ツアーを毎年行います。この契約も航空会社にとってドル箱となります。)をASIではなく、RAMがとったことからASIにとって痛手となっており、ASIはにっちもさっちも行かない経営危機に陥りました。
セネガルの世論的には「モロッコ人が悪い」的な意見が多いようですが、私はこれはセネガル政府が全面的に悪いと思います。まず、ASIの筆頭株主になった動機が不純で、9月にIMFがセネガル政府の財政危機のレポートを出している、その政府が支払いを滞っている会社の1つが間違いなくASIなのです。セネガルの要人や政府の役人はたいていASIを使いますから、政府のASIに対する支払いは相当な額になります。筆頭株主になることで、極めて悪く言えばこれを踏み倒そうという意図が見えるような気がするのです。Air Afriqueを潰したのも実質関係国の政府の未払いだったと言われていますから、これはあながち間違いと言い切れないと思います。ASIの便は人気があり、それほどガラ空きでもありませんから、巨額の損失など出るはずはないのです。誰かが踏み倒していなければ。しかし、2年前くらいから、ASIはAir Afriqueと同じような下降スパイラルに入り始めていました。それはまずフライトの遅れという形で表面化します。これによってクレームが出始める。クレーム対処の慢性化によって職員の意気も下がり、サービスの質が低下します。そうすると、ASIはサービスがよくないという噂が流れます。さらに、フライトの遅れが慢性化すると、ASIは遅れるということでビジネス客が敬遠します。そしてどんどん客離れがおきるのです。
だいたい、航空会社の運営に素人な政府はRAMのASIに対する貢献を軽く見すぎています。ASIは自前ではわずか4機しか所有していない。1機がトラブルを起こせば、たくさんのフライトがキャンセルになります。グループ企業であれば人員や機体の貸し借りもあるし、相互依存の中で共存をはかるわけですが、あからさまな競争相手になってしまってはASIのような中小はひとたまりもない、ということをもっと認識するべきなのです。セネガル政府はさっさとRAMとの対話を進めて、筆頭株主に戻ってもらう方向で交渉するべきという気がします。

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