2009年4月27日月曜日

OLPC:新しい挑戦


しばらくOLPC周辺は暗いニュースばかりで、このまま消滅してしまうんではないか?とも危惧されたのですが、ネグロポンテ氏はそんなに簡単にあきらめていなかったようです。OLPCはいくつかに解体され、派生したソフトウェア開発を行うSugar Labs、スクリーンを扱うPixel Qiなどが、XO Laptopから少々距離を置いて仕事を進めたようです。そして、ネグロポンテ氏率いるOLPC本体は自力での新しいハードウェア開発をやめ、コンセプトを作ることに注力し、ハード作りはメーカーに任せる方向に転換させました。
結果としてこの改革は非常によい結果を生んだようで、最近OLPC周辺のニュースがいくつも浮上してきています。まず、XO-2、これはブックタイプのネットブックを2面のタッチスクリーンにしたDSの発展系みたいなもの(写真参照)ですが、これがいよいよ実機が作られる見通しになったようです。近年、iPhoneのヒットなどでタッチスクリーン周辺の技術は非常に進みましたし、ハードとソフトの連携も進んでこのコンセプトの実現が技術的に可能になったのでしょう。また、XO-1についてもチップをAMDからVIAに変える(ArsTechnica)など、マイナーチェンジを図っているようです。しかし、最も大きな発展はソフトウェアでしょう。XO-1はもともとSugarという子供用にカスタマイズされたOSを積んでいました。しかし、これはあまり人気がなくOLPCもついに折れてWindows XPを搭載したXOを出さざるを得ませんでした。このSugarについては私も昔、酷評しました・・・というのはインターフェイスこそ子供用になっているものの、一旦アプリケーションレベルに入れば他のLinuxディストリビューションと何ら変わらないワープロだのFirefoxなどが入っているだけだったからです。むしろ、UIをいじった分ものすごく使いにくくなっている印象を受けたものです。しかし、このSugarが大進化をとげたのです。もちろん基本的にはSugarはFedoraベースのLinuxですが、アプリケーションという概念そのものを捨て、Activitiesという形でほとんどすべてのアプリケーションを見直しています。ソフトウエアがあってその機能があるという一般のコンピュータの概念から離れて、子供の活動があってそれに対応するActivitiesがあるという逆のアプローチなわけです。そしてこれはiPhone Appsと極めて似た生態系だと言えます。そういう意味で新生Sugarが一番近いのはiPhoneのOS Xだと思います。また、旧Sugarの問題点であった「アプリケーションが少ない」ということに関してもかなり改善されています。それにしてもPythonをグラフィカルに作れるActivitiesが標準とか、いったい対象年齢が何歳なんだ??というところはまだ残っています。その反面ちょっと重くなっている気もしますが、これは私が使ったのがUbuntu上で動くエミュレータだったからかもしれません。とにかくUIとしての新Sugarは素晴らしい出来だと思います。確かにこれなら子供用に特化されたOSを語れるものに仕上がってます。また、Sugarの進化はそれだけではありません。SugarをXO以外のハードで立ち上げる場合、以前はライブCDを焼いてそれから立ち上げる必要がありました。しかし新Sugarは実にいろいろな方法が用意されているのです。まずUbuntuなど他のLinuxディストリではエミュレータが用意され、レポジトリからダウンロードして簡単にSugarを起動できます。またWindowsやMac OSXでもVirtualBoxを使って仮想マシン上で動かせるようになっています。(これはテストしていませんが)さらにまだBeta段階ですがSugar On a Stickと言って、USBメモリ上にSugarをインストールし、Sugar環境を有り体に言ってどこでも使えるというものも開発されています。これはまた新しいコンセプトだと思います。One Laptop Per ChildではなくOne Stick Per Childとも言うべきもので子供1人に1台のラップトップが難しいなら子供1人にUSBスティック1本というコンセプトの変化です。そしてそのスティックにOSとデータを保存することによってどこでもどのコンピュータでもその子のマイコンピュータになるという新しい考え方ですね。これはもしかしたら子供用だけでなく一般のビジネス用にも広がるコンセプトかもしれません。しかもラップトップに比べてスティックのコストは段違いに低いですし、メインデナンスフリーでもある。そしてマシンは学校に据え付けという形でラップトップである必要はない。また例えばネットカフェなどでもそのスティックから起動して宿題をやるとか新しい形態の使い方が考えられます。(ArsTechnica
リンク:OLPCプロジェクト

0 件のコメント: