2007年9月13日木曜日

マーケットシェア神話の崩壊


マーケットシェア神話とは、マーケットをある決まったサイズのケーキに見立て、それを中心から切り分けるような形にモデル化することによって産まれたものである。いかにその取り分を多くするか、そのパーセンテージがすべてとなる。しかし、このタイプのビジネスモデルは言ってみれば最初から自分たちの限界を自分で決めてしまうという欠点。そして資本主義社会の根本的規則である「独占禁止法」と対決する運命にあるという欠点を持っている。しかも、その発展がある程度で頭打ちになり、その後は衰退するしかないという運命すら決まっているのだ。マーケットシェア神話は例えば昔はVHS対Betaの構図で見られた。そして、VHSはマーケットシェアで世界を制し、Betaは消えていったがさらにその数年後、VHSもその地位を別メディアに奪われ、消えていく運命にあった。
今このVHSにあたるのがWindowsである。MSはVHSを牽引した松下よりもはるかに大きくマーケットシェアに依存している。MSのビジネスモデルはマーケットシェアが下がれば崩壊してしまうのだ。そして、現在のMSのOSにおけるシェアはすでに独占禁止法に抵触するほどで飽和状態。つまり成長は見込めない。
それと全く反対のビジネスモデルを持つのがアップルだ。Macのシェアは6%前後で特に伸びもしないが極端に下がりもしない。今、Macのマーケットシェアが下がるのを恐れているのはアップルではなくMSの方だろう。そうなればLinuxを応援でもしないかぎり、独占禁止法につきまとわれることになる。しかし、アップルの製品開発力とマーケットの牽引力はMSなどよりはるかに上を行く。コンピュータのハードおよびソフトだけでなく、ネットワーク機器、携帯音楽プレーヤ、そして携帯電話。それをとりまくコンテンツ配信事業。アップルは言ってみれば新しいケーキをいくつも作り出していくことで独占禁止法やマーケットシェアの欠点にとらわれないビジネスモデルを作り出した。そしてもちろんそれを支えているのが「ブランド力」であるのは言うまでもない。MSはただ市場そのものが拡大するのを見ながらそのマーケットシェアを取ることしかしてない。新しいケーキを作り出してはいない。X-Boxだって言ってみれば既存のPSなどによって作られたマーケットを食っただけである。
さて、ヨーロッパではアップルは音楽配信においてマーケットシェアを食い過ぎてしまい、独占禁止法に抵触しているとされてしまったがこれに対するアップルの対応もユニークだ。DRMというものを持ち出してレコード会社つまり著作権というものをドンとまな板の上に出してみせたのである。MSやSONYなら絶対にやらない。MSやSONYはマーケットシェアの原理から出ていないので、これらの著作権そのものも自社で買ってしまう方向に出るだろう。またしても既存のケーキ・・・というわけである。
アップルはまたもや新しいケーキを作ろうとしている。マーケットそのものを作ろうとしているわけである。

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