2008年8月10日日曜日
OLPC:消えた夢
今年の5月に「OLPCはもう終わり?」と書いた直後に、新しいコンセプトが発表されて少しだけ期待しました、やっぱりOLPCはもう終わりなのかもしれません。それは一向に本格的に生産、出荷されている気配がないのに、もうすでにOLPCハード構成が古くさいものに成り果てているからです。これでは、子供にさえアピールしないでしょう。それに、何度も書いていますがOLPCの成功の鍵を握るのはオンラインサービスです。これまたいっこうに始まる気配すらない。これでは全くOLPCは孤立したただ安っぽいだけのPCです。
大変残念ですが、OLPCはミスリードされた、有望なプロジェクトに終わってしまいそうです。
その事態を招いてしまったのは1つにネグロポンテ氏のワンマンぶりがあるでしょう。
ワンマンのカリスマ経営者は悪いものではありませんし、IT業界にはそんなに珍しいものでもありません。AppleのSteve Jobs氏もMSのBill Gates氏もそうだと言えるでしょう。またUbuntuのMark Shuttleworth氏も言ってみればそうだと言えます。
しかしネグロポンテ氏はすべてをミスリードしてしまったように見受けられます。
ハードの開発にあまりにも長い時間とリソースをつぎこんだこと、かたくなに商業ベースのパートナーを拒んだこと、そしてマーケットとの融合を拒んだこと。このミスリーディングによってハードの価格を目標の100ドルはおろかその倍近い180ドルにしか押さえることができなかった。また、途上国政府の支払い能力を過信したために、実際には金が入らず、ハードの生産が思うようにできなかった。そしてSugar UIの思わぬ落とし穴。さらに追い討ちをかけるように低価格ラップトップが登場し、商業ベースに乗ってマーケットを席巻、それによってこのジャンルのハードが急速に発達、低価格化が進んだこと。最終的にはユーザの要望に屈し、XPを搭載することになったこと。
しかしXPすら、OLPCでは遅いこと。
もちろん、OLPCのコンセプトは大きな影響力がありました。これがなければASUS Eeeはなかったでしょう。低価格ラップトップのマーケットもなかったでしょう。だからこそ、OLPCが大きな規模で、展開できないでいるのが非常に残念です。もっとタイムリーにいろんな決断をしていたら、今は本当に100ドルで途上国の子供達がOLPCを手にしていたのかもしれません。また、OLPCプロジェクトが直接途上国政府とやり取りするのでなく、国際機関だとか政府系援助機関やNGOなど、途上国において事業を展開するのに慣れている機関の手を借りれば、資金調達やインプリメンテーションももっとスムーズに行ったはずです。
今でもコンセプト的に共感する人は多いし、実際インテルなどの企業がパイロットプロジェクトを展開しています。今後もこれが単に消え去ってしまう夢でなく、たくさんの人が見続ける夢になっていってほしいと思います。
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