2007年7月25日水曜日

今そこにある危機-ベナンGSMスキャンダル


西アフリカの小国ベナンはナイジェリアとトーゴの間にある小さな国だが、民主化が進んでいて今年はじめには無事に政権交代も混乱なくすませたことから、国際的にも優等生と見られていて、急成長を約束されていた。

しかし。

2週間ほど前、政府はこの国のメジャーな携帯キャリア2社を「税金払ってないから」とサービス停止に追い込んだ・・・

ベナンの携帯キャリアは4社あり、政府のPTT(通信公社)が運営するLibercom、西アフリカで広くサービス展開しているTelecel、同じくAreeba(前身Benincel)、そして一番後発のBell Benin Com。加入者が多いのはAreebaとTelecelである。この国はおかしなことに慢性的なSIMカード不足という(はっきりいってわけわからない)問題があり、「SIMは朝早くから並んで買うもの・・・」というヘンな風習がある。これはどのキャリアを見ても同じなのだが、政府系のLibercomは特にSIMがプレミアがつくくらい「買えない」とされており、またサービスも悪いと言われていた。また後発のBB Comはほとんど首都以外ではつながらないという問題をかかえている。
日本で言うなら(規模的に)Docomoとauが突然使えなくなっちゃうようなモノである。

さて、この政府の「払え」と言っている「税金」なのだが、これはよく見ていくと外国資本や国際資本がアフリカに流れ込む際の難しさを象徴しているようなできごとなのだ。
つい最近、TelecelはMoovに、AreebaはMtnに名称を変更している。単なるサービスの名称変更には政府の許可はいらない。お知らせベースで届け出ればいいことなのである。Areebaの場合を見ていくと、これを運営している会社はSPACETEL BENIN S.A.という会社でキャリア名称はBenincel→Areeba→Mtnと変えている。名前を変えても運営している会社は変わらない。
しかし、現地法人のウラには「資本の流動」というものがあり、どうやらコレが「税金」というものに引っかかったようなのだ。SPACETELの設立時、資本がどうなっていたかは不勉強にして知らないのだが、Areebaはブランドとしてはインターナショナルで他国でも展開するレバノン系資本とされている。そして MtnはINVESTCOMという投資ファンドとMtnというキャリアの持つブランドである。もし、SPACETELがMtnグループに売却されたのであれば、キャリアの使用許可をMtnグループは政府に対して再申請しなければならない。というのが政府の言い分。
Areebaは経営はSPACETELなのでその必要はなく、今回も単なる名称変更であるという言い分。

どちらもビミョーな言い分なのであるが、一番困らされたのはユーザであろう。

SPACETELが限りなくグレーな会社であったとしても、百万人単位でユーザがいるものを強制的にサービス停止させた政府の暴挙はアフリカにおける事業の脆さ、投資の危険さをひしひしと感じさせるもので、たとえベナンの政権が安定したとしても今後数年にわたり海外からの投資を控える動きが出るだろう。SPACETEL解体ともなれば公称1万5千人いる職員は路頭に迷う。これに対する補償はどうなるのか?今の状態は誰にも不幸な状態である。ユーザもSPACETEL職員もSPACETELへの投資者も、政府も。
唯一笑えるのはLibercomのみ。となると、これはユーザをLibercomに取り込み、Areebaのインフラを極めて安価に乗っ取るという政府のたくらみとも思えるわけで、こんな話まるで昔のギニアとかコンゴ民でしか聞いたことがないくらいの民主度の低い話。また、もし対話をする気があるなら水面下で話をつければいいものを・・・

とにかく、優等生に見えても叩けばいくらでもホコリが出るというのをまじまじと感じさせてくれる事件です。

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