ArsTechnicaに面白い意見記事があったので私も考えてみることにします。
タイトルは、アップルはいかにしてOSのマーケットシェアを伸ばしたか?となっていますが、中を読むと「いかに」ではなく、「マーケットシェアを伸ばしたアップルの将来像」を占うようなものになっています。
アップルのOSマーケットシェアはアップルの黄金時代に比べればまだまだ低いのですが、それでも盛り返しているそうです。これはコンピュータのマーケットそのものが往時と比べて格段に大きくなっているから、出荷台数としては往時をはるかにしのいでもシェアという数字は伸びていないということでしょう。
もちろん、アップルのシェアを伸ばしている原因、それはまず「ブランド戦略」でしょう。特にアップルの位置づけというのはオートクチュール的位置づけではなく、上級カジュアルという位置づけだと思います。アップルに続いて同じようなブランド戦略をとった企業はいくつもあります。たとえばスターバックスコーヒー、アバクロンビー&フィッチなどがそうです。
次にハードとソフトを一体化して製品として売るという一種のクローズドな技術的生態系をがっちりと構築すること。
最後に、製造から小売りまでのセミオープンな流通システム、コンテンツの流通システムを作り上げること。
この3つを独立したものでなく密接にリンクさせたことがアップルのOSシェア拡大の鍵だと思います。
記事の全体的論調は、ここにきて岐路に立たされるアップル・・・といった感じですが、確かにそういう見方をすることができるでしょう。ブランド戦略について、例えばスターバックスコーヒーはシェアを伸ばすと同時にかなり大胆な拡大路線を選択し、一般化の道を選んだわけです。しかし、それはそれぞれの店の質の低下、顧客層の質の低下を招き、ブランドイメージは損なわれて、今は大規模な縮小路線をたどることを余儀なくされています。アップルも基本的に拡大基調なのはいいと思いますが、アップル製品のブランドイメージを損なうような一般化は避けるんじゃないでしょうか。シェアを伸ばすと言っても、せいぜい15〜20%が上限(現在は8%ということです。)という気がします。それを考えるとシェア獲得のために互換機だとかOSのライセンスという路線はない気がします。むしろ、iPodやiPhoneといった埋め込みOSという分野でシェアを伸ばす方を選択するはずです。
アップルはソウトウエアカンパニーとしての将来を模索するべき、というリシンガー氏の意見には少々首を傾げます。アップルが目指しているのはむしろソフトウエアを走らせるプラットフォームをリードする企業だと思うからです。もちろん、ソフトウエアに対するアップルの姿勢は一貫しているとは思いません。Macにおいては自社でiLifeやiWorkという非常に低価格なソフトウエアスイートを開発してさらにバンドルしているのにiPhoneではApps Storeでサードパーティによる開発を奨励しています。
アップルとオープンソースとの関係はかなり微妙なものです。多分、アップルはソフトウエアのコアというものをJPEGのような「一種の規格」として捉えているのかもしれません。だからOSXはオープンソースなFreeBSDをコアとして成り立ち、その規格に沿った上で独自のOSとして仕上げられているし、SafariのコアであるWebKitをオープンな開発キットとして提供してもいるわけです。
これは、ソフトウエアを1個の切れ目のない独立した物体(Windowsのような)として考える人には奇異なものに映るかもしれません。しかし、OSXやLinuxなどのソフトウエアというのは、レゴのようなものになっていて共通のライブラリや基本サービスを使います。だからソフトウエアの総体として「これはオープンソース」ということができないのです。
アップルがさんざん文句を言われながらiPhoneでJavaとかFlashを使わせない理由、それはJavaやFlashがソフトウエアでなくプラットフォームだからなのではないでしょうか?
0 件のコメント:
コメントを投稿